女性医師として思うこと
現在、私は高崎市医師会で医療保険と学校保健を担当理事として務めさせていただき、地域包括ケアシステム、准看護学校、広報新聞を副担当理事として務めさせていただいております。コロナ禍で関係各所との対応など、今までにも増して難しくなってきておりますが、会員の皆様に正確な情報発信できるよう努力しているところです。
私は杏林大学を昭和60年に卒業いたしましたが、私が大学に入学したときには100人中20人が女子学生であり、まだ女性は少なかったため、男子学生にはちょっと厳しい指導をなされているのを横目で見ながら、スルーしてもらえることに甘んじていたように思います。その後群大第1内科に入局いたしました。同期入局の医師16人中唯一の女性医師でありましたが、周りの先生方には気配りをしていただき、お互い切磋琢磨しながら男性医師たちとも変わりなく研修させていただきました。医師の仕事は女性だからと言って区別されることなく、仕事をさせていただけることが良いところだと感じ、今日まで続けてこられました。時に同期の先生に医師会などで会えば、病棟での研修の様子や一緒に行った内視鏡の訓練などの様々なシーンがいろいろと懐かしく脳裏によみがえってきて、いつ会っても同じ釜の飯を食った仲間であるといえる格別の間柄と感じられております。
2021年度の医学部の合格率はわずかに女性が上回ったことが報道されました。もうすぐそんな時代が来るであろうことは予想されていましたが、医師の働き方改革も本格的に俎上に上るようになったこの時に、女性医師が増えることに対しての備えも本格的に必要になってくるものと思われます。これは女性医師だけの問題ではないのですが、家庭を持ちながら医師としての経験を積み、なおかつ女性医師の診療科が偏在化しないための仕組みなどが必要であろうとも思われます。女性医師が結婚して子育てするために仕事をリタイアしてしまったのでは、本当にもったいないですもの。とくに現代では今までにも増して臨床現場で新しい知識や技術面での習熟度が要求され、一旦現場から離れてしまうと、もうその場にすんなり戻ってくることは困難であると思われます。家族や周囲の強力なサポートや、本人のタフな精神力および体力は今まで通りもちろん必要ですが、少しずつでも継続して現場に立ちながら経験を重ねていくことが医師の仕事を継続するためにはいいのだと思います。そのためには就業する病院や所属する医会などで工夫して子育て中の男性医師・女性医師の就業時間を短くしながらでも仕事をしていただけるように何人かでチームを作ってコマを埋めていくことや、復職応援への取り組みをしている病院や施設への公的な手厚い補助のしくみなども必要なのではないかと思います。実際にそのような取り組みは少しずつ実を結んでいるようではありますが、家事や子育てを女性のみに任せるのではなく、男性も一緒に参加する仕組みやそれを行う新しい考え方が必要だと思います。私や妹も医師を続けておりますが、幸いにも男女を問わず積極的に家事をこなす家族の強力な支えがあってこそであり、この点には深く感謝しています。
女性も生涯仕事をもって働き続け、夫婦別姓も認められる時代も来るだろうと思い、結婚してもそのままの名前を通しておりますが、現実の壁は想像以上にまだ高いようです。色々な多様性を認めてほしいと願う今日この頃です。