医療安全部門に所属して
皆様、こんにちは。群馬大学医学部附属病院医療の質・安全管理部の大石裕子と申します。今回このような貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
私は2007年に群馬大学を卒業し、初期研修の後に腎臓・リウマチ内科へ入局しました。関連病院での後期研修後に大学に戻り、大学院生活を送りながら医員として大学勤務をしていたところで、ご縁があり、2019年より医療の質・安全管理部に所属しています。
皆様は「医療安全」と聞くと、どのような印象をお持ちでしょうか。私は院内で働いていても医療安全部門にお世話になることは滅多になく、異動するまで医療安全部門の存在もそれほど認識していませんでした。
ある時、患者さんの対応に苦慮し、上級医からの勧めもあって初めて医療の質・安全管理部の扉をたたきました。診療科内で話し合ってもなかなか解決策がなく手詰まり感を抱いていた時に、医療の質・安全管理部からアドバイスをもらい、少し気が楽になったのを覚えています。このような経緯もあり、異動のお話をいただいた際は、患者さんでも医療者でも誰かの役に立てるならとお引き受けしました。
実際に医療安全部門の業務に携わってみると、想像以上に多岐にわたることを実感します。院内で発生する事象は、ある意味全て「医療安全に関わるもの」とも言えてしまうので、いつの間にか、よろず相談所になっていることもあります。
メインは患者さんの診療に関することですが、医療者や部署間でのコミュニケーション不足からコンフリクトに発展していると相談を受けることもあります。インシデントレポートを通して直接的あるいは間接的に対立することもありますし、報告者の熱い思いや置かれた状況が色濃く反映されたインシデントレポートを受けることもあります。医療安全部門の一員としては、一つのレポートからその背景に潜む課題を探るべく日々格闘しているのですが、心掛けているのは、相手の話に耳を傾け、想像力を働かせて、相手を理解しようと努力することです。医療者は皆、患者さんのためにより良い医療を提供するという同じ目標に向かっているはずですので、敵対関係ではなく協働できる関係性を築けると良いなと思っています。 また、最近は業務過多による悲鳴に近いレポートを受け取ることもあります。タスクシフト・シェアをしようにも、どの部署も人員不足が顕著でタスクの委譲先が見つからないという現状ですので、一朝一夕には解決が難しいことを痛感しています。個人的にはAIによる業務支援が進み、さらにカルテ情報が一元化されて、病名や既往歴、内服薬など患者情報を病院間で共有できると、診療情報提供書のやり取りが簡便になり、円滑な診療移行ができるのではないかと考えています。それほど遠くない将来に実現できるのではと思っており、医師会の先生方ともスムーズに連携できるようになることを期待しています。